約束の時間に三分ほど遅れて彼女は現れた。 僕の意図に気付いているのだろうか。 だとしたら照れているのかもしれない。 彼女は僕と目を合わせようとはしない。 僕が全ての知識を動員し、出来る限りの背伸びをして、ありったけの勇気を振り絞って思いを伝えると、彼女は言った。
「あの……何か良く分かんないけど、帰っていい?」
僕が返事をする前に、彼女は気味悪そうに僕をちらりと見ると、塾があるから、などと言ってそのまま帰っていった。